医院名:兒玉医院 住所:〒270-0026千葉県松戸市三ヶ月1543番地 
電話番号:047-345-6971

大腸ポリープ

大腸ポリープについて

大腸粘膜にできる良性腫瘍の1種で、多くは隆起します。サイズは2mm~2㎝以上と幅広く、平坦なもの・茎状の組織があるものなど形状もさまざまです。大腸がんは放置された良性腫瘍の大腸ポリープから発生することが多いため、大腸ポリープの切除は将来の大腸がん予防になります。
ほとんどの大腸ポリープは自覚症状を伴うことはありません。大腸ポリープができやすい場所として直腸とS状結腸があり、ここは硬い便が擦れる場所ですからある程度大きくなると血便や便潜血検査陽性で発見されたり、増大すると腹痛や便秘を起こすこともあります。ただし、盲腸や上行結腸といった肛門から距離のある大腸は、内腔を通る便の性状が液状なのでポリープや癌腫(癌の固まり)が増大しても出血や通過障害(便秘や閉塞による膨満感や腹痛など)に気付かずに癌が進行して初めて発見される場合もあります。

症状

先述したように大腸ポリープが小さい場合、また平坦な場合には、自覚症状を伴うことはほとんどありません。発見できるのは大腸粘膜を直接観察できる内視鏡検査のみです。ポリープがある程度大きくなると、便潜血が陽性になり、さらにポリープが大きくなると腸管の狭窄や閉塞、硬い便が擦れるなどによって腹痛、便通異常、出血、粘液便などの自覚症状を伴うこともありますが、そこまで大きくなっている場合、がん化の可能性も大きく、速やかに治療を受ける必要があります。
将来の大腸がん発症を予防するためには、自覚症状がない段階で定期的に内視鏡検査を受けることが必要です。

検査

大腸内視鏡(大腸カメラ)では、ポリープの有無、形状や表面の性状、色調、大きさなどを直接観察でき、その場で組織採取を行うことができるため生検による確定診断も可能です。また発見したポリープをその場で切除する日帰り手術を検査中に行うこともできます。これにより、治療も完了します。

治療

大腸内視鏡検査では、大腸粘膜を直接観察してポリープの有無を確認します。ポリープがあった場合には、通常の観察で大きさや形、色調などを観察し、拡大内視鏡やNBI観察で表面構造などから大腸ポリープの質的診断と深達度診断を行ったうえで、安全な日帰り内視鏡下大腸ポリープ切除が可能かどうかを判断します。可能な場合には、その場で切除し、回収した切除組織を病理検査に提出して確定診断を行います。切除のために別日のスケジュールを作る必要がなく、検査から治療まで1日ですんでしまうので、お忙しい方でも治療を受けられることが大きなメリットです。
ただし、拡大内視鏡観察などで粘膜下層浸潤が疑われる早期大腸がんの場合や、進行大腸がんESD(内視鏡下粘膜剥離術)が必要な陥凹型もしくは側方発育型のポリープや、太い血管を有する大きな有茎性ポリープや、ポリープが多発して見つかった場合には入院による内視鏡下切除が必要になります。この場合には、連携の高次医療機関でスムーズな内視鏡治療を受けられるようにしっかりサポートしています。
また、内視鏡診断で明らかに外科的切除が必要な大腸がんの場合は、速やかに手術が受けられるように生検結果を待たずに連携病院の外科にご紹介し、手術に必要な諸検査を受けられるように手配します。もちろん生検結果は判明次第、紹介先に追加で情報提供致します。

ポリペクトミー

最も一般的な切除方法です。隆起しているポリープにワイヤー状のスネアをかけて締め付け、高周波電流を流して切除します。切除自体の出血は抑えられますが、粘膜の下の層に高周波電流の熱が伝わりやすいため術後出血や穿孔を起こすリスクがあります。そのため、当院では比較的大きな亜~有茎性ポリープを切除する場合は、この方法を用いて切除し、切除時の出血が無くても内視鏡用クリップを掛けて予防的止血処置をしています。

コールドポリペクトミー

高周波電流を使わず、特殊なスネアを用いて鋭的に切除します。切除時に軽度の出血がありますが、止血を十分に確認します。また、拡大内視鏡を用いて病変の遺残が無いことも確認します。先述したように高周波電流の熱による悪影響が無いので術後の出血や穿孔のリスクが少ない新しい治療法であり、当院では比較的小さなポリープを切除する場合は、この手法を主に使って切除しています。

EMR(内視鏡的粘膜切除術)

平坦なポリープにはスネアがかけられないため、粘膜下に生理食塩水を注入してポリープ全体を持ち上げてスネアをかけて切除します。サイズや状態によって医療用クリップや縫縮による処置を行うこともあります。生理食塩水などがあるため下層に熱が伝わることがなく、高周波電流で安全に切除できます。

当院の実績について

当院での大腸ポリープ切除とADR(大腸腺腫検出率)の実績(図1、2)


大腸がんの大部分は大腸腺腫(以下、腺腫)が成長して発生する(adenoma-carcinoma sequence)といわれており、腫瘍性ポリープである腺腫を切除することで、大腸がんの予防が可能です。いっぽう、非腫瘍性ポリープである過形成性ポリープ(一部のものを除く)は経過観察可能な病変です。後者も切除している医療機関も少なくないのが現状ですが、当院では、拡大内視鏡やNBI観察によって切除前に両者を鑑別し切除が必要なポリープのみを切除しています。令和2年から4年までの3年間に当院では、842個の大腸ポリープを切除していますが、切除が必要な腺腫以上の腫瘍性ポリープは735個で87.3%でした。図1に当院での大腸ポリープ切除における過去3年間の切除ポリープ数と腫瘍性ポリープ率の経年変化をお示しいたします。徐々に診断率が向上し、令和4年は91.4%でした。腺腫以外のポリープは割と大きな過形成性ポリープや若年性ポリープが含められており、腺腫以外でも臨床的に切除が望ましいと判断したものも切除しているので、実際はより高率なものとなります。
また、大腸内視鏡検査の正確さ・質を示す指標(Quality indicator)の一つにADR(Adenoma Detection Rate:大腸腺腫検出率=大腸腺腫発見者数/全大腸内視鏡検査数x100)という数値があり、米国では到達目標が25%以上に設定しています。図2に当院でのADRの過去3年間の実績をお示しします。令和4年は37.8%あり、一定基準以上の水準を満たしていると思われます。当院ではあまりポリープの無い年代が罹患する潰瘍性大腸炎やクローン病の方の定期検査も数多く行っておりますので、ADRは低めに算出されます。
当院の大腸内視鏡検査・治療は、日本消化器内視鏡学会専門医(2005年取得)、日本大腸肛門病学会専門医(2012年取得)を5年毎に更新・保持しているベテランの検査医(院長)が全て一人で行っておりますので、1日の検査数に限りはあるものの、1日の検査数がより多くても内視鏡検査医の経験や質にバラつきのある医療機関と違い、いつ検査や治療を受けても上記のような一定以上のQualityが裏付けされた医療サービスを受けることができます。

 

当院での大腸がん発見とその後の治療の実績(図3、4)


コロナ禍であった令和2年から4年までの間も当院では積極的に大腸内視鏡検査を施行していたことで、図3にお示ししたようにその3年間で計40名の大腸癌を発見しました。
図4にその後の治療経過をお示しします。当院で診断された早期大腸がん13名は当院の日帰り手術のみで、6名は連携している新松戸中央総合病院消化器内科で短期入院による内視鏡治療(ESD)によって治療が完遂されました。また、外科的治療が必要となった19名中15名が新松戸中央総合病院外科にて最新鋭のロボット支援手術などの低侵襲鏡視下手術による根治術が遅延なく施行され、合併症も無く早期に社会復帰を実現しています。当院は近隣の新松戸中央総合病院と強固に連携しておりますので、当院で大腸がんが発見された場合、都内や他市のがん専門病院や大学病院に行かなくても、松戸市内で全ての治療が完遂できる地域完結型大腸がん治療が可能です。
大腸がんは早期発見、早期治療によって完治が期待できる癌腫です。便潜血が陰性でも、50歳を過ぎたら一度は大腸内視鏡検査を受けて、前癌病変である大腸ポリープを早期に切除し予防することを強くお勧めします。特に大腸がんや大腸ポリープの家族歴がある方は、もっと早めに検査をご検討ください。

切除後の注意点

治療後の注意点内視鏡検査中のポリープ切除日帰り手術を受けた場合、内容によって変わりますが手術後はしばらくの間、いくつかの制限を守っていただく必要があります。当日夕方からの食事やシャワー、翌日の軽いデスクワークなどは可能ですが、激しい運動・出張や旅行など長時間移動・飲酒・刺激の強い飲食物などは数日から1週間程度避ける必要があります。
そのため、検査日のスケジュールは、こうした制限が起こる可能性を考えて決めていただいています。検査日が迫ってから急な出張などが入ってしまった場合には、検査日の変更、切除必要なポリープを別日に改めて切除するなどの対応も可能な場合がありますので、早めにご相談ください。